千年の都、古都京都にはユネスコの世界文化遺産に登録された文化財が数多くあります。それを目当てで京都観光に行く方も多いでしょう。ただ、数が多く、ただ巡るよりもそれぞれの見どころや巡り方をしっかり準備しておかないと、しっかり巡り切れない場合もあります。今回は、世界文化遺産に登録された古都京都の文化財の見どころをご紹介します。
古都京都の文化財について
古都京都の文化財は、京都市と宇治市、滋賀県大津市に全部で17ヶ所が世界文化遺産に登録されています。
京都は平安時代から江戸時代まで日本の首都でした。日本全国の建築や都市計画等の発展に影響を与えてきたこと、京都の建物が各時代の建築様式や庭園様式の代表例であること、自然環境と融合した景観は日本独自の精神性や文化を表していることなどが評価されて、1994年に世界文化遺産に登録されました。
古都京都の文化財の見どころ
17ヶ所の文化財はそれぞれ特徴や見どころが異なります。各文化財のポイントを、それぞれの文化財の成り立ちや背景なども交えてご紹介します。
本願寺
本願寺は「西本願寺」と「東本願寺」がすぐ近い場所にありますが、文化財に登録されているのは西本願寺です。1272年に浄土真宗の開祖「親鸞聖人」の廟堂として建立されましたが、比叡山延暦寺からの迫害などで移転し、1591年豊臣秀吉の寄進で今の場所に移りました。
境内には桃山時代の建物が多数あり、御影堂や阿弥陀堂などの国宝もあります。金閣、銀閣と並んで「京の三閣」といわれる飛雲閣なども見どころの1つです。
教王護国寺(東寺)
教王護国寺は、京都景観のシンボルです。新幹線の車窓からも見える「五重塔」は55メートルあります。木造の塔としては日本一の高さで、1644年に徳川3代将軍の家光が再建・奉納したものです。境内は国の史跡に指定されているほか、五重塔と金堂、大師堂、蓮花門は国宝となっています。重要文化財の1つである講堂には、国内で現存する最古の密教彫像もあり、見どころの1つです。
二条城
徳川幕府の京都の拠点であった二条城は、徳川家康が1603年に築城したといわれています。家康と豊臣秀頼の会見場所となったほか、15代将軍慶喜が大政奉還を行うなど、歴史のターニングポイントでたびたび登場する重要な場所です。重要文化財の本丸と国宝の二の丸御殿の2つの建物や特別名勝の二の丸庭園など見どころが数多くあります。二の丸御殿(国宝)の絢爛豪華な建築と障壁画は一見の価値があります。
清水寺
京都で有名な寺院の1つで、平安時代から多くの人が参拝に訪れたといわれています。創建は古く、778年に僧延鎮が開山し、798年に坂上田村麻呂が仏殿を建立したといわれています。清水寺のメインは国宝の本堂「清水の舞台」で、京都の美しい景色を一望できます。今の本堂は1633年に再建されたといわれています。
慈照寺(銀閣寺)
慈照寺(銀閣寺)は室町幕府8代将軍足利義政が造営したといわれている山荘です。境内に創建当時から残っている建物は、銀閣と東求堂の2つで、ともに国宝です。銀閣は質素高貴な造り、東求堂は日本最古の書院造の建物といわれています。
銀閣寺の枯山水の庭園も見どころの1つで、波紋を表現した銀沙灘と富士山の形をした向月台は、他ではなかなか見られない「わび、さび」の文化を感じることができます。
賀茂御祖神社(下鴨神社)
上賀茂神社と共に国家鎮護の神社として崇敬されている神社です。11世紀初頭には現在の構成に整えられましたが、応仁・文明の乱で焼失、1581年から再整備されました。本殿2棟が国宝、境内の桜門など31棟が重要文化財に指定されています。境内は史跡に指定されていて、本当の森のような「糺の森」は京都市街地と思えない静寂に包まれた空間です。
賀茂別雷神社(上賀茂神社)
上賀茂神社は、下鴨神社とともに賀茂神社と総称されます。緑あふれる広大な敷地では、競馬(くらべうま)などの五穀豊穣の神事が行われます。本殿、権殿の2棟が国宝、34棟が重要文化財、境内は史跡に指定されています。
鹿苑寺(金閣寺)
鹿苑寺は、金箔を貼った3層の舎利殿、金閣で有名なスポットです。室町幕府3代将軍の足利義満の別邸だったものを、死後寺院としたといわれています。今の金閣は1950年に焼失、後に再建したものです。庭園「鏡湖池」では、「逆さ金閣」と呼ばれている美しい光景を見ることができます。
龍安寺
室町時代の大名、細川勝元が創建したといわれている寺院です。龍安寺の見どころは、史跡・特別名勝に指定されている方丈庭園、「石庭」です。東西30メートル、南北約10メートルの庭に白砂を敷き詰めており、15個の石を5・2・3・2・3に配置しています。この石の配置は、「虎の子渡し」や「七五三の庭」と呼ばれています。
仁和寺
宇多天皇が888年に建立して以来、「御室御所」と呼ばれ天皇家より篤く信仰され、門跡寺院の筆頭に位置付けられてきました。格式の高さから「徒然草」や「方丈記」などの古典にも登場しています。金堂が国宝で、五重塔や二王門(仁王門)など多数の重要文化財もあります。仁和寺境内の背が低い桜「御室桜」が名勝としても有名で、樹高が低い=花(鼻)が低いことから「お多福桜」とも呼ばれています。
天龍寺
天龍寺は足利尊氏が後醍醐天皇を弔うために1339年に創建したといわれている禅寺です。京都五山の中の一位として栄えた名刹で、紅葉と桜の名所としても知られています。嵐山と亀山の借景を巧みに取り入れた池泉回遊式庭園「曹源池庭園」は特別名勝・史跡に指定されています。
西芳寺
西芳寺は、奈良東大寺の大仏建立の責任者としても有名な「行基」が開創したといわれています。約120種類の苔が境内を覆っており、緑のじゅうたんを敷き詰めたような光景から「苔寺」とも呼ばれています。拝観には事前に往復はがきでの申し込みが必要で、見学+読経と写経を行います。
高山寺
高山寺は、京都市右京区の栂尾山にあり、境内が国の史跡に指定されている寺院です。楓の古木が茂り、紅葉の名所としても知られています。栂尾の茶園は、栄西禅師が中国から持ち帰ったお茶を開祖・明恵上人が植えたとされる日本最古の茶園といわれています。また、高山寺は、国宝の鳥獣人物戯画や明恵上人像など数多くの貴重な美術工芸品を所有しています。
延暦寺
京都市左京区と滋賀県大津市の比叡山全域を境内とする、広大な寺院です。788年に伝教大師・最澄が建立したといわれており、それから1,200年に渡り日本の仏教の核心を育んできました。有名な浄土宗の開祖・法然や浄土真宗の開祖・親鸞、日蓮宗の開祖・日蓮など、多数の僧が比叡山延暦寺で修行しています。戦国武将・織田信長に焼き討ちされたことでも有名です。
境内は広大で、場所によって京都も琵琶湖も一望できます。本堂の根本中堂は国宝、大講堂は重要文化財とされているなど、合わせて10の国宝と50以上の重要文化財があります。根本中堂は2016年から10年間かけての大改修工事を行っています。
醍醐寺
京都市伏見区にある醍醐寺は、醍醐山上一帯の「上醍醐」と山麓の「下醍醐」、壮麗な「三宝院」を合わせた広大な境内地を誇る寺院です。境内には100余りの堂塔が点在しています。境内にある五重塔は、京都府内でもっとも古い木造建築物(952年建立)といわれています。醍醐寺は桜の名所として知られており、豊臣秀吉が「醍醐の花見」を行った場所としても有名です。
平等院
10円硬貨のデザインとして描かれていることで有名な、平安時代の藤原一族の栄華が伺える寺です。メインは鳳凰を屋上に戴く鳳凰堂です。鳳凰堂の中には阿弥陀如来坐像、52体の雲中供養菩薩像が安置されています。
宇治上神社
宇治上神社は、平等院と宇治川を挟んで東岸の朝日山の山裾にあり、仁徳天皇や応神天皇などを祀る神社です。本殿は日本最古の神社建築といわれています。国宝の本殿には、平安時代後期に伐採された木材が使われており、同じく国宝の拝殿には鎌倉時代前期に伐採された桧が使われています。
京都の文化財の巡り方
全ての文化財を巡るには数日かかります。余裕がある場合は順番に、日数が無い場合は地域を決めて巡りましょう。京都市内の中心部をメインに巡る場合は、清水寺や二条城、東寺、本願寺などを中心にプランを組み立て、銀閣寺や金閣寺などを時間に合わせて巡ると良いでしょう。
京都市内の北部にも、上賀茂神社や下鴨神社、金閣寺や仁和寺などがあります。比叡山延暦寺や平等院は南北に離れています。また、京都市内は電車で巡りにくいので、移動には京都市バスやタクシーを上手に利用することをおすすめします。
さいごに
17ヶ所、それぞれに歴史や背景があり、見どころが数多くあります。春の桜の季節、秋の紅葉の季節は京都が特に美しくなる季節です。京都へ旅行しに出かけたときは、京都の文化財を巡ってみてはいかがでしょうか。
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