広島の原爆ドームは日本国内にある世界遺産の1つです。今回は原爆ドームの概要と併せて回りたい周辺の平和スポットについてご紹介します。
原爆ドームってどんなところ?
広島県広島市にある「原爆ドーム」は、被爆の惨状を今に伝える貴重な建物です。人類の繁栄と破滅の分岐点を露呈し、世界恒久平和と核兵器廃絶を願ってメッセージを発信し続けています。現在、敷地内は立ち入り禁止のため、柵の外側からのみ見学できます。
かつては近代化に貢献した文化的施設
原爆ドームは、もともと産業推奨、文化復興を目的として、1915年4月に広島物産陳列館として竣工された建物です。県内の物産や他府県から収集した参考品、取引に関する書籍類などが並べられていました。当時の広島は近代工業の発達により賑わいのある街並みでしたが、都市部はまだ木造2階建てが主流でした。この広島物産陳列館はヨーロッパ様式のレンガ造り建築で、全体は3階建て、正面中央部分には5階建ての階段室、その上に銅板の楕円形ドームが設置されていました。その革新的な建造物に人々は驚嘆し、広島の名所の1つであったといわれています。
原爆投下から現在まで
昭和20年(1945年)8月6日、一発の原子爆弾が投下され広島市街の建物は一瞬にして倒壊。辺りは跡形もなく焼けてしまいました。
原爆ドームから爆心地までの距離は南東約160mでした。凄まじい爆風と熱線により館内にいた職員たちは全員即死、建物は火を噴きだして全焼しました。しかし、厚い壁や鉄骨のドーム部分などは奇跡的に倒壊を免れました。それは、上方からの爆風がほぼ垂直に下方に働いたことが理由だと推測されています。鉄骨がむき出しとなった姿は、誰が名付けたわけでもなく、いつしか「原爆ドーム」と呼ばれるようになりました。
悲惨な記憶を思い起こさせる建物を残すことには賛否両論ありましたが、広島市の募金活動などによって補修・保存が行われ、平成8年(1996年)12月に世界遺産に登録されました。決して恨みの遺物ではなく、世界平和と核兵器撲滅への願い、人類懺悔の象徴を目的として存在しています。
併せて回るべき「広島平和記念公園」
原爆ドームの南側に位置する「広島平和記念公園」は併せて巡りたい平和的スポットです。園内には当時を知るための資料館、祈りをささげるための記念碑などが点在しています。
広島平和記念資料館
「広島平和記念資料館」は、核兵器廃絶と世界恒久平和の実現を目指して設立されました。本館と東館に分かれており、被害者の遺品や写真・資料の展示を中心に、原爆投下前後の広島の変遷などを知ることができます。
※2017年10月現在、リニューアル工事中のため本館は2018年7月まで閉館予定。本館展示内容の一部を東館1階の企画展示室で展示。
原爆死没者慰霊碑(広島平和都市記念碑)
「原爆死没者慰霊碑」は平和都市の再建を念願して建立された記念碑です。碑には「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」と刻まれています。中央部分の石室には、国籍に関わらず亡くなった原爆被爆者の名簿が納められています。
平和の鐘
「平和の鐘」は、原爆被災者広島悲願結晶の会によって設置されたオブジェです。その鐘の表面には国境のない世界地図、撞座(鐘を棒で突く部分)には原子力マークが施され、「世界はひとつ」「原水爆禁止」という強い思いが込められています。原子力マークの内側には、突く人の心を映し出す鏡が入れられています。
広島空港から原爆ドームへのアクセス
空港リムジンバス(広島バスセンター行)に乗車し、「広島バスセンター」にて下車。そこから徒歩約5分。(所要時間約60分)
※広島駅行の空港リムジンバスを利用した場合「広島駅新幹線口」にて下車、「広島駅(南口)」から電車またはバスでアクセスできます。
さいごに
原爆投下によって未曽有の大惨事を経験したのは、世界で唯一日本だけです。建物内部がむき出しになった原爆ドームは、被爆の惨状を世界に投げかける貴重な世界遺産です。さらなる世界平和を願い、原爆ドームに足を運んでみるのもよいのではないでしょうか。