年に2回だけ公開されている伊丹弥太郎氏の別邸と庭園、九年庵。その細部に渡り入念に造り上げられた邸宅と庭園は紅葉や新緑との調和が大変美しく、毎年多くの人で賑わっています。今回は、国の名勝にも指定されている九年庵の魅力をご紹介します。
九年庵ってどんなところ?
九年庵とは、佐賀県の実業家、伊丹弥太郎氏が1892年に建てた別邸と1900年から9年の歳月をかけて造られた庭園のことで、毎年期間限定で公開されています。古式豊かな邸宅と美しい庭園は国の名勝にも指定されており、毎年多くの人が訪れ賑わっています。公開は苔の保護のため11月の9日間と5月の短期間だけの、年2回の限定公開となっています。赤々とした紅葉、または光に透けるやわらかな新緑は庭園に広がる深みある苔の緑と調和し、どちらも息を飲む風情があります。
九年庵とは本来、邸宅西北にある茶室を刺した名でした。現在はこの茶室は解体されています。
アクセス
JR長崎本線「神埼駅」より車で約15分、九州佐賀国際空港からは車で約45分です。九年庵には駐車場がありませんので、吉野ヶ里歴史公園臨時駐車場へ停車してください。カーナビへは「吉野ヶ里公園管理センター」を入力します。
「神埼駅」からは路線バスも出ています。バス利用の場合は「仁比山公園」で下車してください。
九年庵の見どころ
美しい借景庭園
庭一面に広がる苔の緑、ツツジやモミジなど四季折々で趣の異なる景色を見られる庭園は、築庭の名人、誓行寺のほとり和尚が手がけました。9年という長い歳月を経て造られた6,800平方メートルの広い庭園は、あるがままの自然が活かされ、生き生きとした美しさがあります。深い樹林の向こうには筑紫野や有明海が見え、奥行のある借景庭園となっています。
古式ゆかしい邸宅
庭園に囲まれている別邸は、茶室と書院の様式を折衷した数奇屋建築で、入母屋葦葺の温かみのある屋根と白い腰張りの土壁が印象的な邸宅です。素朴ながらも丁寧な持ち味があり、自然を活かした庭園に溶け込んでいます。材質や色合い、意匠など全てが絶妙なバランスで佇む姿はしっとりと馴染み、和の心を感じさせます。紅葉とも新緑とも味わい深く調和しています。
九年庵周辺施設
伊東玄朴旧宅
医師、および蘭学者である伊東玄朴氏の邸宅の伊東玄朴旧宅は、九年庵から徒歩1分の場所にあります。伊東玄朴氏は幕末から明治にかけての蘭方医学の医師です。一時は江戸幕府の奥医師にも挙用され、蘭方医が幕医に就いたのは伊東玄朴氏、戸塚静海氏が初めてのことでした。天然痘から多くの人々を救ったことをはじめ数々の功績がある伊東玄朴氏が暮らした邸宅は、佐賀県史跡にも指定されています。伊東玄朴旧宅内ではオランダの書物「医療正始」や蘭学塾「象先堂」のパネル写真などが展示されています。
仁比山神社
九年庵と隣接する仁比山神社は九年庵と同じく紅葉の名所の1つです。地元でも多くの人に愛されており、紅葉の季節には多くの人が訪れます。12年に1度、申年にだけ行われる「大御田祭」では千年以上前から伝えられる豊作を願う「御田舞」が有名で無形民俗文化財にも指定されています。また、境内にある金剛力士像2体は市の重要文化財に指定されています。
水車の里・水車の里遊学館
九年庵から車で5分の場所にある水車の里遊学館には、水車の資料や水車発電によるからくり人形が展示されています。仁比山地区は城原川の水流を利用した水車が数多く設置され、人々の生活に大きく貢献してきました。明治時代には60基あったといわれる水車群は機械化の流れで姿を消してしまいました。水車の歴史を残し、伝える水車の里ではかつて動いていた水車の復元した姿を観覧することができます。
さいごに
九年庵の紅葉や新緑は素晴らしいものです。どちらも何度でも訪れたくなります。周囲にも見どころはたくさん。心落ち着けたいそんなときに立ち寄ってみてはいかがでしょうか。